優しいなんて、もんじゃない
「離れて。」
「お姉さん名前は?」
「ゴルゴ。」
「…え?」
「どうでもいいんで、ほんと離れて。」
半ば強引に男を押し退けるようにして椅子から立ち上がる。
…ゴルゴは某有名漫画の主人公の名前だ。弥生さんが開店前に読んでたから印象深かったのだ。
「ちょ、待って待って。」
カウンターの中へと戻ろうとする私の腕を、男は掴んで引き止めてくる。
「触んないで。」
「だから、お名前は?」
「だから、ゴルゴ。」
「それウケ狙い?」
「だったらもっとマシに狙うから。マジで離せ変態。」
ギロリ、鋭く睨み付けると男は肩を上げて怖がったふりをするだけで。口元は綺麗に孤を描いている。