優しいなんて、もんじゃない
「ゆう!漢字は?」
「優しいの優、てか離れろ馬鹿…!」
反射的に腹に拳を叩き込めば、男の腕から力が抜ける。するりと抜け出し私は駆け込むようにカウンターの中に逃げる。
苦笑いを浮かべる弥生さんと美月さん、その他もろもろ。
お腹を押さえながらゆったりとした足取りで椅子に座った男を警戒心剥き出しで見据えていると。
男は口端を妖艶に持ち上げ笑う。
「ゆーう。」
「……、」
「俺もね、ユウって呼ばれてんの。」
「…あ、そう。」
別に聞いてないし。なんて皮肉めいた言い方をする私に、男は嬉しそうににこにこ笑っている。
てか、お腹さすりながら笑ってるなんてやっぱコイツ正真正銘ドMだ。