優しいなんて、もんじゃない
冷たくあしらってみても男は懲りずにまた私に話しかけてくる。
口元が笑ってるから、笑ってはいるんだろうけど。やはり一番表情を窺える目を隠しているその帽子が邪魔だ。
「優、いくつ?」
「呼び捨てにしないで。」
「えー、いいじゃん。」
「あんたにされると腹が立つのよ。」
冷たさMAXで刺々しく、言葉を吐き出す私に、暴言を慎めと言うように弥生さんが頭を叩いてきた。
それが手加減なしだからほんとに痛い。
「ユウ、あんたも謝りな。」
「は、なんで?」
「急に抱きついたりしたら誰だって怒る。ここは外国じゃないんだから。」
同じように美月さんに戒められる男は、渋々といった様子で私を見ると。その態度を急変させ、へらりと笑って見せた。
「ごめんね。」