優しいなんて、もんじゃない
少し首を傾げて謝る男だけど、これっぽっちも可愛くは見えない。
小さく頷くだけで、すぐに視線を外したがやはり気になる。
グラスや食器を拭きながら横目で男を見ると。男の方はガッツリ私を見ていて。
と、確認出来るのも帽子の鍔が私に向いているからなのだけど。
「もう一人のお姉さん、俺カシスください。」
「あら、いい子。」
お姉さんと呼ばれたことが嬉しいのか、弥生さんはにこにこしながらカクテル造りに励んだ。
あれのどこが嬉しいのか、女慣れしている感満載で逆にいやらしいじゃないか。
差し出されたカクテルをのむ仕草一つが艶やかで綺麗。
右手の中指に光るリング、あれこの前テレビでやってためちゃめちゃ高いブランドの新作だ。
「(…何者?)」