優しいなんて、もんじゃない
「…分かんない。」
弥生さんの気持ちに共感することは出来ないけど誰かと喋ることが好きな彼女には天職。
喋ることが嫌いではないけれど好きでもなく、どちらかと言えば1人が好きな私には考えられない。
と。
店内にいたお客さん達が帰った後。
一度静かになった店内にカランと、カウベルの音が鳴り響いたのは深夜0時を回ってからだった。
食器とグラスを洗い、拭いていた私はドアの方へと視線を向け。
「いらっしゃいまー…」
そこに見えたのは、グレーの帽子。よくよく見れば外国のブランドのマークが入っている。
昨日同様に鼻から下を今日は濃紺のマフラーに埋めて、最早顔は見えない状態だ。
「こんばんは。」
「……今日は、1人なんだ。」