優しいなんて、もんじゃない
男は、弥生さんに「カシス」と注文すると私の前に位置する椅子に腰掛けマフラーだけを外した。
グレーの帽子の被り方が深すぎて逆にオカシイのだが、つっこまないでおいた。
「はい、あ、優私ちょっと店空けるから。」
「え、」
「看板はクローズにしとくから大丈夫。」
そういうことを心配しているんじゃない。いや、実際お客さん来られてもお引き取り願うから困るけど。
弥生さん、貴女、昨日の光景見てましたよね?
いきなり抱き付いてくる変態男と私を2人っきりにする気?私、もし身の危険感じたらコイツ殺しかねないよ?
「じゃあ、ユウくんごゆっくりー。」
「はーい。」
必死に目で拒絶を伝えてはみたが、弥生さんは私の気持ちを無視することが趣味なのか?
にやり、不適に笑い店を出て行った。