優しいなんて、もんじゃない
当然、店内には私と変態男ユウの2人になる。
警戒心剥き出し、自意識過剰かもしれないけれど昨日の今日だ。気を抜くことなんて出来るわけがなかった。
静かにグラスを持ち上げカクテルをのむ男の指にはやはりあの有名ブランドのリング。
帽子だって、見てみればブランド品だったし。
「優、」
「……なに?」
じっと見下ろしていた男が私の名を呼ぶから、驚き冷静を装うまで少し間が出来てしまった。
まあ、男はそんなこと気にしていない様子だしセーフだろう。
男はジーンズのポケットから何かを取り出すと私に手渡した。
渡されたそれは折り畳まれた白い紙。
なんだ、と開いて見るとそこには黒いインクで印刷された――――――
「…楽譜?」
「うん。弾いて?」
「……、」