優しいなんて、もんじゃない



別に、興味ないと言ってしまえばそれだけだ。でも、何故か今はそう言い切ることが出来ない。



「……あ、」


そこで私は手に握ったままの一万円札を見下ろしぽつりと呟く。


「おつり、返し忘れた。」



結局、口元だけで感情を諸々伝えるような笑顔にやられてしまった。


ユウめ、アイツ元々おつり受け取る気なかったな。河井さんも、また今度おつりをって言っていたけど……。



男の人って、おつり受け取りたくない思考の持ち主なの?私には絶対無理な考え方だ。




―――――――――…
―――――――…



「あれ、ユウくんは?」

「あー…帰った。」

「そうなんだ?」



暫くして。

コンビニの袋片手に帰ってきた弥生さんは、第一にユウの所在を確認してきた。


ピアノでユウの創った曲を弾いていた私は視線を合わせることなく、それだけ伝える。




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