優しいなんて、もんじゃない
「ん?優にしては珍しい曲弾いてるわね。」
「…、」
「誰の歌ー?」
「……忘れた。」
鋭く、つっこんできた弥生さんに内心ドキリとしたが。曖昧な言葉で誤魔化した。
特に怪しいとも思われなかったようで、弥生さんは興味なさげにコンビニの袋を漁りおにぎりと缶コーヒーを取り出す。
「優も食べる?」
「…いや、お腹すいてないからいい。」
「アンタ…、もしかしてダイエットでもしてんの?」
その言葉に首を横に振って見せれば、有り得ないと言いたげに顔を歪める弥生さん。
「よくやってけるわね!だからそんな棒みたいな身体してんのよ。」
「……食に欲がないだけだし。」
「じゃあ、酒のめ。」
「そこ意味分からないんだけど。」
弥生さんは、あはは、と年よりは若く見える無邪気な笑みを小さく浮かべると。
おにぎりにかぶりついた。