優しいなんて、もんじゃない



コーヒーでそれを流し込み、弥生さんはよし!といきなり大きな声を出すからちょっと驚いた。


頬を両側からぱちんと叩き、どうやら気合いを入れる声だったらしい。




「優は、明日も大学でしよ。今日はもういいよ!」

「あ、うん…」

「…どうしたー?」


何時もならば待ってましたと言わんばかりにさっさと帰ってしまう私なのだけど、今日は、




「…邪魔じゃなかったら、もう少し、ピアノ貸してほしいんだけど。」


ポーン、と鍵盤を叩くとそれが静かな店内に響いた。



チラリと弥生さんを確認すれば、さっきコーヒーをのんだにも関わらず今度はウィスキーをのんでいた。


目を見開き、グラスに口を付けたまま固まる弥生さんは数回瞬きを繰り返すと。



ふふ、と嬉しそうに微笑んでウィスキーを飲み干して私に向かいはにかむ。




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