優しいなんて、もんじゃない
「…優が、私にお願いすることなんて滅多にないからビックリしたわ。」
「そ、かな…?」
「アンタ内心隠す子だしね。意地っ張りだし。
「……、」
意地っ張り関係ないだろ、と緩く睨めばおどけたように肩を上げる弥生さん。
「どんどん使いな。それは、アンタのピアノなんだから。」
「…ありがとう、」
弥生さんは豪快に笑うと今度はグレープサワーをつくり始めた。一人酒でも平気でするタイプだろうか、酒好きめ。
まあ、酔い癖は悪くはないからまだいいだろう。
そんなことを考えながら私はユウのつくったバラード曲を弾くのだった。
…おつりの件は、またユウに会うことがあれば返せばいいかな。
取り敢えず、この曲はお世辞とか抜きに気に入ったのだ。と言ってもユウにお世辞をつかう必要なんてまったくないから今のは語弊。