優しいなんて、もんじゃない



「お疲れさん。」

「一曲につき千円。」

「おい。」

「…冗談だって。」



そんなやりとりを交わす、彼女の名は弥生さん。歳は私より八つ上で母親の姉の娘で、正真正銘、いとこである。


そんないとこ、弥生さんが経営しているお洒落なバーで私はバイトしている。





「優ちゃん、ピアノ上手いよね。」

「あ、どうも。」



低いが優しい声色に名前を呼ばれ、声の主へと視線を送れば。そこには頬杖をついて微笑むここではよく見る顔があった。



「河井さん、たぶらかさないで下さいよ?」


隣に立つ弥生さんが綺麗なピンク色が揺れるグラスを差し出しながら言う。




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