優しいなんて、もんじゃない
「何これ。」
「中、見てみなー。」
それだけ言うと、弥生さんはトイレに入っていった。
言われた通り、折られたレシートを開き白い面を見ると。
「……チッ、」
思わず、舌打ち。
レシートの裏には、0.5ミリの黒ペン(多分弥生さんに借りたんだろう)で文字が綴られていた。
――――――――――
優へ
あの曲弾いてくれてるって弥生さんに聞いたよ。
ありがとう。
優だいすき。また来るからその時聴かせてね。
ユウ
――――――――――
あー、もう。
何だこの最後の攻撃。だいすきとかいう部分は省いて、弥生さん、言わないでよ。
てか、ユウの曲だって気付いてたんだろうか。どちらにしても、練習してたと知られたことが恥ずかしい。
「……はあ。」
疲れた、とぼやき私はピアノへと視線を送る。
黒塗りの筈のピアノが、グレーに見えた気がした。重症だ。