優しいなんて、もんじゃない
「……何。」
「いや、えっとー…うん。」
「………。」
歯切れ悪くうじうじとするユウにイラっときたが、面倒なのでほっとく。すたすたと歩き出した私に釣られるよう、後ろからはまた足音。
付いて来るくせに何も喋らないユウは、本気で気持ち悪い。不快だ。
くるりと勢い良く振り返れば、ユウはグレーの帽子を被り直していた。
「え、うわ…っ、」
驚いたのか、焦り気味に乱暴に帽子を被ったユウは「ビックリした」と言って笑った。
そんなに見られたくないのか、と若干苛立ちを感じたがそこには口を出さない。
「用事ないなら、帰れ。着いてくんな。」
「えー…。」
「(うっざ……。)」
睨んではみても、ユウは口元を緩ませただけ。どうしようか、ストーカーいますって警察に電話しようか。
それか一発殴って逃げるか。私は後者を選択した。