優しいなんて、もんじゃない
「優、河井さんがウルサイからちょっと買い出し頼んでいい?」
「……。」
嫌だ、と目で伝えてはみるが呆気なく無視された。浅く溜め息を吐き出しまた付けたばかりのエプロンを外す。
今度は畳むことなく乱雑に椅子に投げ捨てた。
「投げないでー。」
「今回も尼崎さんが悪いよね。ごめんな、優ちゃん。」
「おい、゙も゙ってなんだ。」
「前回も、今回も、多分次もでしょ?」
背後で二人の言い争いと、他のお客さんの笑い声が聞こえる中。私は藍色に黒を足したような外の世界へ身を投じた。
元々、店内が橙の電灯で薄暗い雰囲気を醸し出しているから目が闇に慣れるのにも時間はかからなかった。
「…さて。」
買い物と言っても、何を買えばいいんだろうか。