優しいなんて、もんじゃない
と。
「あ」といきなり声を零すように発しくるりと振り返ったユウと当たり前だが視線は絡まる。
私がユウを見ていることが分かっていたかのように、意地悪くニヤリと笑った男に微細に眉根を寄せた。
「優に言っとかなきゃいけないこと、忘れるとこだった。」
「…なに?」
言いたいこととは何だ?と首を傾げてみせれば。ユウは目元を柔らかく緩めて。
「ポケットにある紙、捨てないでね。」
そう、意味の分からない言葉を残して今度こそ夜の闇へと消えていった。
ポケットにある紙って、何だ?ユウの後ろ姿が消えた先を見つめていた私は、とりあえず自分のジャケットのポケットへと手を突っ込む。
そして、独白に近い声音で「あ」と呟いた。
確かに、私のポケットの中には見慣れない丁寧に折り畳まれた白い紙が入っていた。
いつの間に、と思いながらも紙を広げて見る。