優しいなんて、もんじゃない
――――その頃のユウ
先程までいたファーストフード店の前を通り過ぎ、路地を曲がった道端に停まってある黒塗りの乗用車へと乗り込む。
と。
運転席に乗っていた人物がぐるりと勢い良く振り返る。その顔はまさしく鬼のそれ。
「遅いッ!」
「ごめん美月ー。」
「ちょっとした買い物に1時間かかる!?」
「優に会っちゃって。つい。」
「…優ちゃんに?」
瞬間、瞳をギラリと光らせる美月はあんなに弥生さんに叱られてもまだ優を゙こちらの世界゙へと誘う事を諦めていないらしい。
さすが、凄腕と言われているだけのことはある。
粘り強さは人一倍だ。
「…なあ、美月ー。」
「何ー?」
俺は、ジーンズのポケットから自分の黒のスマホを取り出し弄る。
優メールくれるかな…。
運転席に座る美月も、携帯を弄りながら俺の呼びかけに返事を返す。
一呼吸置いて、言の葉を吐き出した。
「優って、゙魅力゙が半端ないよね。」