優しいなんて、もんじゃない
「…そうね。あれほどの人材、何が何でも欲しいわ。」
「諦める気は?」
「ない。」
即答かよ、と小さく笑った俺はミラーに映る美月を見た。
実に楽しそうな、それでもって嬉しそうな顔をする彼女はこの仕事が好きなのだろう。
―――そして、優の才能に魅入られてしまったのだろう。
「弥生さんが怒るんじゃない?」
「……弥生ちゃんは、゙この世界゙で潰れてきた人達を見てるからね。」
「…アンタが、あそこのバーに頼らせるからじゃん。」
「……その件に関しては、感謝してもしきれない。」
困ったように笑い微細に眉根を寄せた美月を励ますわけじゃないし、応援するわけでもないけど。
現に、俺も優を゙この世界゙へ誘い込むことには反対だ。
一度潰れた人間は、そう簡単には戻れない。
優が潰れるとは限らないけれど、彼女にはこちらの空気は合わない。