優しいなんて、もんじゃない
゙この世界゙で潰れるなんてこと、実力次第で時間の問題。
―――まだ、俺はここに立っているけどいつこの道が途切れるかなんてこと分からない。
そう考え出すと、不安は拭い去れない。
だから、だ。
優にこの世界は似合わない。
と。
俺の心情を読み取ったように、美月が凛とした声で俺を呼んだ。
「ユウ、アンタは絶対に潰れさせないわ。」
「……。」
「それと、絶対に優ちゃんは捕まえる。」
「…美月ー…。」
「無理よ。アンタの優ちゃんに対する気持ちは見れば分かるけど、彼女ばこちらの世界の人間゙よ。」
だから、捕まえる。
そう決定事項だと言わんばかりに呟き、ニヤリと笑った美月を止めることは不可能だと判断。
…あーあ。
優ってばさ、ほんとに人の心を掴むのが上手いよね。
彼女のピアノは、別格だ。
――――静かな夜に、車内で交わされた会話を噂の彼女は知らない。