優しいなんて、もんじゃない
「で、美月さん。この子は?」
「ああ、菊は知らないよね。弥生ちゃんのいとこの優ちゃん。」
「…弥生さんの?」
「そ。で、」
美月さんは、そこで不自然に言葉を区切ると。一度私に視線を流しニッと口角を緩めた。
何か嫌な予感がして、焦った私が美月さんの名前を呼ぶ前に彼女は言い切った。
「私からしたら、第2の瀧菊名って感じかしら。」
「…へえ、それは」
とても興味がありますね。
そう呟いだ若き天才ピアニスドは、私に向かい鍵盤の上を軽やかに飛んで遊ぶ綺麗な手を差し出してきた。
にこり、柔和な笑みを浮かべた彼だがそこはやはりプロ。オーラさえ感じる。
「瀧菊名です。是非、君の演奏を聴かせて頂きたい。」
「…そんな、あの瀧さんにお聴かせ出来る程の演奏では…。」
そう言い小さく首を横に振った私に、ははと笑った彼。
「いや、美月さんに見定められたのなら本物なんだよ。」