優しいなんて、もんじゃない
「っ、…離せ。」
「いーや。」
首を傾げて茶目っ気にそう言ったユウを睨み上げ、調子にのるなと肘を脇腹へ叩き込んでやる。
うッ、と鈍い唸り声が頭上から聞こえ。ユウの力が緩んだ内に腕の中から抜け出す。
「…ゆー…」
「…、」
脇腹を押さえながら恨めしげな視線を私に向ける男。自業自得だド変態が。
ふいっと視線を逸らして歩き出す私の後ろから、追いかけてくる足音。
長身のユウが隣に並び、そのスラリと長い脚が歩幅を私に合わせ歩む。
少しばかり俯き気味に歩く私の視界に映るのは、隣を歩く黒革のショートカットのブーツ。
…あれ、このブーツのブランドってユウ付けてたリングと同じブランドだ?
「…ユウって、このブランドが好きなの?」
「ん?あー、別にそういう訳ではないんだけどね。」