優しいなんて、もんじゃない
「…河井さんが、オムライスとか可愛いもの頼むから。」
「え、やっぱ俺が悪いの?」
眉を下げ困った顔をする河井さんに当たる気はなかったけど、この際どうでもいい。
ふいっと顔を背けて、本日3度目になるエプロンを付ける作業を行う。
グラスを拭く、食器を洗う仕事をする私の耳に入るのは小さな談笑。
と。
カラン、店のドアが開くカウベルの音が店内に響き。私と弥生さんの「いらっしゃいませ」という声が見事にシンクロする。
「弥生ちゃーん。」
「あ、美月!」
親しげに互いの名を呼ぶ声が交差して、弥生さんは笑顔を綺麗に浮かべ高揚感を伺わせていた。
美月、と呼ばれた女性は後ろに男性を3名と女性を1名連れている。