優しいなんて、もんじゃない



「…河井さんが、オムライスとか可愛いもの頼むから。」

「え、やっぱ俺が悪いの?」



眉を下げ困った顔をする河井さんに当たる気はなかったけど、この際どうでもいい。


ふいっと顔を背けて、本日3度目になるエプロンを付ける作業を行う。




グラスを拭く、食器を洗う仕事をする私の耳に入るのは小さな談笑。


と。

カラン、店のドアが開くカウベルの音が店内に響き。私と弥生さんの「いらっしゃいませ」という声が見事にシンクロする。




「弥生ちゃーん。」

「あ、美月!」


親しげに互いの名を呼ぶ声が交差して、弥生さんは笑顔を綺麗に浮かべ高揚感を伺わせていた。



美月、と呼ばれた女性は後ろに男性を3名と女性を1名連れている。




< 9 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop