優しいなんて、もんじゃない
「あ?」
「、」
「…おいユウ、誰だソイツ。」
「誰もいないよ。」
「嘘つけ。ちょっとそこ退けろよ。」
「何で、嫌だ。」
「退けろ」「嫌だ」と両者一歩も引かない言い合いが続く中、私だって何となく理解する。
ユウめ、仕事か何かをサボってたんだろうな。
と。
「退けろっつってんだろうが。」
「あッ、」
グイグイと肩を押しのけられたユウは、その勢いに負けてよろけてしまう。つまり、私の目の前にはユウの背中ではなくやたら口の悪い男。
暫く無言でお互いに初対面の相手に向かって睨みをきかす。センター分けは、グッと不機嫌そうに眉根を寄せた。
「誰だよあんた。」
「あんたこそ誰。」
「まずあんたから名乗れ。」
「人に名前聞くなら、自分から名乗るのが礼儀でしょ。」
「うっせー俺に命令すんな。」
「ガキか、ハゲ。」
「……。」
「……。」
「………藍《ラン》だ。」
「………優。」