優しいなんて、もんじゃない
『え、まさか嘘!』
『でも似てるじゃん!本物!?』
『ヤバイよマジで!?』
黄色い声は主に女特有の甲高いそれで。中には男の低い声も混じってはいるが、大半は女子。
なんだなんだ、と辺りを見回している私。一方、ユウと藍さんはと言うとお互いに顔を見合わせてぼそり。
「「やっべ。」」
何が?と聞こうとした私の頭にふわりと乗る優しい手は、他の誰でもない。ユウのものだ。
顔を上げ、ユウの眼を見た私にその綺麗すぎる顔を困ったように歪ませ。
「残念だけど、仕事行ってくるよ。」
「、」
「誘ったの俺なのに、ごめんね?」
「…別に。」
早く行きなよ、と言った私にユウは本当に残念そうに寂しげな微笑を浮かべ「またね」と言葉を残して藍さんと一緒に駆けて行った。
視線でその後ろ姿を見つめていれば、2人の前で勢い良く止まるワゴン車。
運転席に見えたのは、何やら怒鳴り散らす美月さん。