優しいなんて、もんじゃない
2人が後部座席に乗り込んだと同時、しっかりドアが閉まるのも待たず急発進したワゴン。
美月さん、なかなかハードテクニックな運転をする。
さっきまで買い物をしていた彼女が、どうしてこんなにタイミング良く現れるのかは謎だが。特に気にすることもなく、私は帰宅するべく歩き出した。
――――その頃、車内
「あんた!仕事サボって何してたのよ!」
「…初めは、藍来ないし飲み物買いに出てただけだったんだよ。」
「なら直ぐに戻りなさいよ!」
せっかくの休みがー!と叫ぶ美月。
「だって、…優が居たんだもん。」
「優、って。さっきのキツそうな女か?」
「うん。てかキツそうって何。殴るよ。」
「お前、一般人に手出すなよ。」
「まだ出してないよ。アピール中。」
「同じだろーがアホ。」
はあ、と盛大に溜め息を吐き出した藍は呆れた眼でユウを見る。
そしてお互いに小声で。
「最終的に傷付くのは、あの子だかんな。」
「……うん。」
自分が中心に置かれ、そんな会話が交わされていたとは今の優は知らない。