秘密のキスをしたとしても。


「花ー!着替えて下に降りてきてー!晩御飯の手伝いしてー」


下からお母さんが叫んでいるのを聞き、急いで制服を脱いで、目の前にあったワンピースに着替え、一階に降りた。


「お母さん、今日のご飯はー?」


リビングに入ると同時にお母さんに聞いたが、そこにお母さんの姿はなく、意外な人物がキッチンに立っている事に気付く。


「あ、母さん、今買い物行っちゃったよ」


おたまでドアの方を指しながらそう言ったのは、紛れもなくお兄ちゃんだった。


お兄ちゃんがキッチンに立っている姿なんて久しぶりに見たかも…。


その姿を見ただけで胸がキュウッと縮まる感覚に襲われる。


そんな私の気持ちを悟られない為に、私は口を開いた。


    
< 11 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop