秘密のキスをしたとしても。
「花ー!着替えて下に降りてきてー!晩御飯の手伝いしてー」
下からお母さんが叫んでいるのを聞き、急いで制服を脱いで、目の前にあったワンピースに着替え、一階に降りた。
「お母さん、今日のご飯はー?」
リビングに入ると同時にお母さんに聞いたが、そこにお母さんの姿はなく、意外な人物がキッチンに立っている事に気付く。
「あ、母さん、今買い物行っちゃったよ」
おたまでドアの方を指しながらそう言ったのは、紛れもなくお兄ちゃんだった。
お兄ちゃんがキッチンに立っている姿なんて久しぶりに見たかも…。
その姿を見ただけで胸がキュウッと縮まる感覚に襲われる。
そんな私の気持ちを悟られない為に、私は口を開いた。