秘密のキスをしたとしても。
約一年もお兄ちゃんに触れてなかった私からすれば、頭を撫でられるなんてハードルが高過ぎた。
しばらく放心状態。
放心状態が溶けたのは、晩御飯が出来上がったのと同時だった。
「ほら、突っ立ってないで食べるわよ」
食卓テーブルの椅子にお母さんとお兄ちゃんが座っているのに気づき、私は慌てて椅子に座る。
四人用の食卓テーブルの椅子の一箇所空いている席。
そこは、一昨年にガンで亡くなってしまったお父さんの椅子。
あまり気にしないようにしているのだが、今日は何故か目に入ってしまった。
私の視線に気づいたのか、斜めに座っているお母さんが口を開く。