秘密のキスをしたとしても。


「……っ」


お兄ちゃんの綺麗な澄んだ茶色い瞳に私の姿が映し出されている。


「俺の顔になんか付いてるか?」


ジッと見つめている私の視線に気付いたのか、お兄ちゃんは口元を手で摩りながら言った。


── 一瞬、心を読まれたのかと思った。


絶対に伝えてはならない、この想いを──。



数十分後、お母さんが仕事から帰って来て、お兄ちゃんは夕飯の手伝いをしにその場から居なくなってしまった。


ポツンと一人、リビングに残されてしまった私。


手伝いに行こうと思ったが、お母さんにあしでまといになるから手伝わなくていいと言われ、動けず。


…金曜日は手伝えうるさかったくせに。


なんて文句を言いながらテレビに目線を向ける。


    


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