秘密のキスをしたとしても。


お兄ちゃんの姿を見た瞬間、私の中の何かが決意したんだ。


本当に、絶対に、お兄ちゃんに自分の気持ちを伝えない事を──。


──次のニュースに変わる前、○○県の兄妹の親と思われる人がちらっと出ていた。


目を真っ赤に腫らして、報道陣の人達に何回も「ごめんなさい、ありがとうございます」と呟きながら去って行く母親の姿が。


その姿を私のお母さんと重ねてしまった…。


もし、あの兄妹が私達だとしたらお母さんもあの母親のように迷惑をかけた人達に謝ると思ったから──。


「花、そんな所に突っ立ってないでお兄ちゃんがよそったご飯、テーブルに持って行って」


「あ…、はーい!」


わざとらしく大声で返事をし、早足でテーブルに茶碗を持っていく。


──今にも流れ出そうな涙を見せないように。


    
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