秘密のキスをしたとしても。
「全然大丈夫……って、花、なんてゆー格好してるの。べちゃべちゃじゃん」
バスタオルで拭き取れなかった水が私の体を伝い、床に水滴を作る。
髪からも水が落ちて足元に水溜りができてしまっていた。
「あはは…。急いでたから…」
苦笑いをしながらそう言うと、お兄ちゃんは私の肩に掛けていたバスタオルをスルッと取った。
そしてそのまま私の頭の上へ被せてわしゃわしゃと掻き回し始める。
あまりに突然なことに、体が振られ、不可抗力でお兄ちゃんに倒れかかってしまった。
トクン、トクン、と心地よいリズムを刻んだお兄ちゃんの心音が私の耳から伝わる。
「わっ…」
「ちゃんと拭かないと風邪引くぞ」
まるで、子どもの面倒をみるかのような口調で私にそう呟くお兄ちゃん。
「…ごめんなさい」
「わかればよし」
お兄ちゃんの胸の温もりを感じながら私の中には嬉しい感情と苦しい感情が渦巻いていた──。
不可抗力とはいえ、お兄ちゃんとくっつくことが出来たなんて凄く幸せ。
でも、お兄ちゃんの行為は私を“子ども”“妹”としか思っていないからしてくれている──。
絶対にこの想いを伝えないって決めたけど──苦しいモノは苦しいよ──…。