秘密のキスをしたとしても。
「良い名前だね」
「はは、初めて言われた」
最後の一口を口に含み、袋を丸めながら笑う比陰くん。
…なんか、初めて話すのに初めてじゃないみたい。
なんて思いながらフと自分の状態に驚いた。
さっきまであんなに情緒不安定だったのに、今は何事もなかったかのようにスッキリしている。
なんだろう…、この感じ。
亜美と居る時と同じ感じ。
「何見てんの」
比陰くんを直視していると、その視線に気づいた比陰くんはジロッと私を睨む。
「ご、ごめんなさい…」
でも…、ちょっと恐い、人。