秘密のキスをしたとしても。


「良い名前だね」


「はは、初めて言われた」


最後の一口を口に含み、袋を丸めながら笑う比陰くん。


…なんか、初めて話すのに初めてじゃないみたい。


なんて思いながらフと自分の状態に驚いた。


さっきまであんなに情緒不安定だったのに、今は何事もなかったかのようにスッキリしている。


なんだろう…、この感じ。


亜美と居る時と同じ感じ。


「何見てんの」


比陰くんを直視していると、その視線に気づいた比陰くんはジロッと私を睨む。


「ご、ごめんなさい…」


でも…、ちょっと恐い、人。




    
< 51 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop