秘密のキスをしたとしても。
「バカにしてるでしょー。お父さんがよく言ってたからつい」
「まぁ、天気めっちゃいいしねー。…わっ」
亜美が上を向きながら歩いているのを見ていると、誰かが亜美の帽子を顔の方へ深くかぶせた。
よろめきながら慌てて帽子を直す亜美。
私はびっくりしながらも亜美の後ろに顔を向けた。
「ちゃんと足元見て歩けー。転ぶぞ」
そこには、F組の担任の安達(アダチ)先生が意地悪そうな表情をしながら立って居た。
まだ二十代半ばの安達先生は女子から絶大な人気を得ている。
少しチャラそうなイメージだが、人懐こくて歳の差を感じない先生だ。
「もう!先生がイタズラするから逆に転びそうになったし!」
亜美が頬を膨らませ、軽く先生を叩きながら言った。