秘密のキスをしたとしても。
「あだっち発見ー!」
「やべ!追いつかれちまった」
遠くから今時風男子二人が先生を指差しながら走ってくるのが見える。
その男子の一人が比陰くんだって気付くのに時間はかからなかった。
「あれ、富川じゃん」
比陰くんが私と目が合った瞬間、私の名前を言う。
言葉が出なかった私は小さくお辞儀で返事を返す。
「富川って富川隼人の妹さん?」
比陰くんの隣に居た男の人がワッした表情で私に問う。
突然のことでびっくりし、また言葉が出なく目をパチクリしてしまった。