秘密のキスをしたとしても。


「声でけぇんだよ、馬鹿」


比陰くんが男の人の頭をバシッと叩く。


男の人の綺麗な黒髪が一瞬にして乱れた。


「いってぇな。もうちょっと優しく叩けよ。…ごめんね、びっくりさせちゃって。俺、比陰の親友の横山 ソラって言うんだ。よろしくね」


「あ…、富川花です…」


前に出されたソラくんの大きな手をしぶしぶ握る。


「あれ!?あだっちは!?」


握手している私とソラくんの横で比陰くんがキョロキョロと辺りを見渡して、叫びながら亜美に聞いていた。


亜美は比陰くんに話しかけられてびっくりしながらも、『ちょっと前に走って先に行っちゃったよ』と答える。


「まじか!ソラ、行くぞ!富川じゃあな」


「花ちゃんとその友達さん、じゃあね」


そう私達に言い残し、二人は全力で去って行った。


ポカンとしてしまう私達。…嵐が去った気分…。



    
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