秘密のキスをしたとしても。
「ふあーい…」
またお母さんかと思い、涙を目に溜めながら返事をすると、静かにドアが開いた。
ドアを開け、そこに居たのは、部活のウィンドブレーカーを着たお兄ちゃんの姿。
びっくりし過ぎて頭が真っ白になる。
「花、体調大丈夫か?」
部屋の中には入らず、廊下に突っ立ったまま私にそう聞くお兄ちゃん。
…多分、部屋の中に入らないのは、思春期の私が嫌がるからだと思ったからだろう。
本当、優しいね…。
「う、うん!大丈夫だよ!お、お兄ちゃんが運んでくれたんだって?ありがとうね!重かったでしょ!?あはは、本当嫌になっちゃうわー」
緊張し過ぎて次から次へと言葉が出てくる。
そんな私を見て、お兄ちゃんはクスクスと面白そうに笑った。
「そんな話せるなら大丈夫だね。安心した」
そう言うお兄ちゃんに胸の奥がキュンと縮まるのがわかる。