秘密のキスをしたとしても。


後ろから名前を呼ばれ、ゆっくり振り向いた。


「…っ」


「やっぱり花だった。間違えてたら赤っ恥だったなぁ」


ケラケラと楽しそうに笑う、私より20センチも高い身長に整った顔、フワフワとした栗毛の髪の毛の男。


少し垂れている目が、この人がいい人だと確信する決め手。


そんな彼は、私の“お兄ちゃん”。



「…お兄ちゃんか、びっくりさせないでよー」


口を尖らせ、怒った素振りを見せたら、お兄ちゃんはまたあの人懐っこい笑顔を見せながら謝ってきた。


…そんな笑顔を見せられたら私が何も言えないの知ってるんじゃない…?


私は黙って前へと歩き出した。


    


< 7 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop