秘密のキスをしたとしても。
────なんて思っている内に時刻は午後五時。
何もこの後のことを考えずにポカンとしてしまっていた。
気付けは外は雲で真っ暗で、雨が降ってきている。
…お兄ちゃん、傘持っていったかな…。
心の中でそう呟いた瞬間、玄関のドアが開く音が聞こえた。
私は慌てて玄関へと走る。
「あ、花。ただいま」
「お…おかえり…なさい」
ピンク色の花柄の傘の水を外に弾いているお兄ちゃんが、私の方を向きながら笑顔でそう言った。
眩しいくらいの笑顔で言ってくれたが、私は気になることがあって返事が詰まり詰まりになってしまう。
そのピンク色の傘…誰の────?