秘密のキスをしたとしても。


その後ろをお兄ちゃんは笑いながらついて来る。


数百メートル先に見えた、壁がクリーム色で格子の窓が印象的な周りより少し大きいウチが私達の家。


門を開き、玄関の扉を開けると母が鼻歌を歌いながら下駄箱の掃除をしていた。


「あら!今日は早いのね。隼人、花、おかえりなさい」


満面の笑みで私とお兄ちゃんの方を向きながらそう言うお母さん。


私は小さく「うん」と答え、靴を脱いで即座に二階へ駆け上がる。


下からはお母さんの怒鳴り声と、お兄ちゃんの笑い声が交差に聞こえた。


バタン。


床に散らばっているプリントが、風で飛ぶくらいドアを思いっきり閉めた。


    
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