秘密のキスをしたとしても。


「これ、お兄ちゃん読んでたの?」


まさか恋愛モノの小説をお兄ちゃんが見てるとは思わず、質問してしまった。


すると一瞬、悲しそうな顔をした後、お兄ちゃんはまた笑顔で頷く。


その笑顔は何故かいつもと違くて──。


「……中々復旧しないな。ブレーカー上げてみるか。ちょっと行って来る」


そう言ってお兄ちゃんはライトの付いた携帯を私に託して真っ暗な廊下へ出て行ってしまった。


「…」


雷がダメな私のために携帯を置いて行ってくれたくれたんだ…。


ありがとう、と携帯を握りしめながら感謝し、私は小説の裏表紙を見てみた。


概要には、“弁護士を目指す女子高生が有名な美形無敗の弁護士と言われた、裁判に一度も敗けた事のない男に弟子入りを懇願する。美形なクセに無愛想な男に振り回されながら事件に巻き込まれてしまう女子高生。謎解き、たまに恋愛物語”

と描かれてあった。


…恋愛モノだけど一応弁護士の話なんだ…。



    
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