秘密のキスをしたとしても。


お兄ちゃんが自分の本を選んで、私にも光が当たる場所に携帯を置いた。


ペラッと音を立て、一ページ目をめくる。


『会いたいけど我慢しないといけない時だってある。

人は我慢して自分にセーブをかけて人生を歩む。

それは誰だって同じ。

でも、我慢しなくていい時だってあるんだ。』


最初のページには、概要と関係ない詞のようなことが書かれてあった。


それを見て自分に言われているような感じがして、チラッとお兄ちゃんを横目で見る。


ベッドの上に座りながら真剣な表情で本を見ているお兄ちゃん。


微かに照らされている顔がなんとも言えない具合で、格好良さが増してる…。


「…」


いつのまにか雷が去っていたのに気づき、急に睡魔が襲って来た。


まだ一ページしか見てない小説を床に置き、私はその場で眠りについてしまった。


お兄ちゃんの香りがする、お兄ちゃんの部屋で──。



    
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