秘密のキスをしたとしても。
「どこに行くー?」
まだ行くとも返事をしていないのに、ソラ君はうーん、と唸りながら考え込んでいる。
私は遠慮しておこうと、ソラ君の誘いを断ろうと口を開いた瞬間、また私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
それは誰とも間違えるはずがない。大好きな人の声。
「────花!」
「お、お兄ちゃん!」
まさか学校でお兄ちゃんと会話することになるなんて思いもせず、焦ってしまう。
陸上部のジャージを着て走りながら私の元へ寄るお兄ちゃん。
この短距離で何人の女子がお兄ちゃんを見て顔を赤くしたことか。
それを見て内心ムッとしてしまう自分がいた。