秘密のキスをしたとしても。


一人、気まずくなりその場で小さくなって居ると、亜美とソラ君が私に顔を近づけて来た。


「やっぱ隼人さんかっこいい!本物のアイドルじゃん!」


亜美は大きな目をキラキラさせながら興奮気味に叫ぶ。


「花ちゃんって本当に富川隼人と妹なんだね!なんか感動しちゃった!」


ソラ君も目をキラキラさせながら亜美と同じ様にそう言った。


二人はお兄ちゃんをそんな上の存在と思っているのか…。


なんて、私は“妹”だからこうやって話したり出来るけど、家族じゃなかったら本当に雲の上の存在なんだよね…お兄ちゃんって…。


「全然似てないね。兄妹じゃないみたい」


そんな興奮気味の二人に対して、至って冷静な比陰くんは私の顔を見ながら呟いた。


その言葉に静かに心臓が跳ねた。


「そう、かな…。似てないかな…」


兄妹じゃなかったらどれだけ嬉しいことか──。血が繋がっていなかったらどれだけ泣いて喜ぶか──。


そんなことを思うと返事が途切れ途切れになってしまい、きっと比陰くんは違和感に気付いただろう。



    
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