恋の施し
「じゃあ、まずは恋を教えてやる前に1つ条件がある」
そんな雪音の姿が見えなくなると、郁が見計らったように私を真っ直ぐに見つめて言ってきた。
この時、やっぱり郁に相談して良かったなぁと思う。
郁は絶対に私の気持ちを笑ったりしない。裏切ったりもしないんだ。
「うん、何でも言って」
そう言うと郁はニヤリと笑い、私の肩に腕をのせて至近距離でこう言った。
「俺を好きな奴だと思って接してみろ」
「…え、いや、無理だよ。
郁は郁だし」
私は即答した。
郁の事は好きだけど、そういう好きではないのだ。
「でも、響花は俺以外男慣れしてないだろ?」
「確かにそうだけど…
だから何?」
郁の言いたい事がイマイチ分からず、ピンとこない。