恋の施し
すると郁はハァ――――と深いため息を吐いた。
頭を抱え込む彼の様子に私は胸が痛くなる。
そりゃあ、いきなりこんな事言われても郁には迷惑だよね…
「…ごめん。それだけ言いたかっただけだから…もう帰るね」
なんか泣きそうになっているこの顔を見られたくなくて私は勢いよく立ち上がる。
「待てよ」
だけど、郁が私の手を掴んで離さない。
「…離して」
「無理」
「…嫌だ、離して」
「だから無理」
すると今度は彼に抱き寄せられて、ますます身動きの取れない状態になってしまった。
そして至近距離で目を見つめられ、さっきまでの気持ちはどこへやら私の顔は一気に熱くなる。
目が合うなんて反則だ。
そんな気もないくせに…期待させるようなことをしないで欲しい。
そんな私の思いを汲み取ったのか、郁は先ほどのため息に対する鬱憤を口にする。