恋の施し
「あ、響花!」
呼び止める郁を無視して私は教室に入った。
手は郁が油断して気が抜けている内に一気に離す。
あんな奴、知るか!
「やるわねー見事にラブラブじゃない?
教室からでもバッチリ見えたわよ?」
教室に入るやいなや雪音に声をかけられた。
「……やめて雪音。
今日一日はアイツの話しないで」
「そんな真っ赤な顔で言われても説得力0ですよ?」
うわぁー…雪音のイジワル…
ただでさえ、皆の視線が痛いのにー…
それを言わないで欲しい。もう、私のライフポイントが0だ。
「あーあ…もう少し早く響花に告白してればなぁ」
「……楓までからかわないで下さい」
郁に告白する前、楓にはきちんと自分の想いを告げて断りを入れた。
だけど、彼が以前と変わらず話してくれる事に喜びを感じてしまうのは…私のワガママだ。
…でも、雪音のからかいや楓のジョークはまだほんの序の口だったんだ…