恋の施し
「俺にも言って」
すると今度は怒りはどこへやら真剣な顔で私に言ってきた。
「は?…てか、え?何を?」
いきなり“言って”って言われても何を言うんだ。
「俺のこと、大好きって言って」
はいぃぃ!?
「無理!絶対無理っ!」
さっきまでこの人怒ってたくせに突然何を言い出すんだ!
ぶっ飛びすぎだよ、郁の思考!
毎回毎回謎だとは思ってたけど、謎には止まらず、こうも頭のネジが緩んでいたとは…
というよりこの状況をどうやって回避しようか…
「何で?」
そう思っていると郁が私を逃がさないとでも言うように追いつめてくる。
ってか郁の目がマジで怖いんですけど。
うーとかあーとか言いながら、私は結局郁の凄味に負け、本音を語った。
「……だって市架さんや柚希君の好きと郁の好きは違うって気づいたから…」
……そんなに簡単に何度も言えない。
「俺のこと“大好き”なんだよな?」