恋の施し


「お待たせしました。ココアです」




浩平君に連れて行かれたのはファミレスだった。


浩平君がどうぞ、と差し出してくれたのでこの時初めて私のためにココアを注文してくれたのだと気付く。


浩平君自身は水しか飲んでいないのに…


だけど、せっかくどうぞと言われているのにここで拒否するのも申し訳ない気がして…というより私は浩平君に対して申し訳ない事ばかりしでかしている気がする。


浩平君のために何をすれば良いのか、どう行動すれば良いのかもう考える余裕は私にはなかった。



だからとりあえず目の前のココアに手を伸ばし、一口飲んで心を落ち着かせる。






「…おいしい」




「それは良かった」




そして幾分落ち着いた私はある疑問が思い浮かぶ。




「どうして浩平君が通りかかったの?家この辺じゃないよね?」




フラフラと歩いていたが、周りを見てみるとここは私の家の近くだ。何十年も住んでるからこの近くに誰が住んでいるとか大体知ってる。

浩平君はこの辺で見かけた事なんかないから、彼の住所はこの近辺ではないはずだ。
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