恋の施し
最初は敬語でしか会話できなかったけど、今は普通に話せるようになった。
「郁の話では、響花ちゃんから郁を振ったんだよね?」
「…うん」
「だけど、響花ちゃんは郁に期待させるような素振りをしてるだろ?」
「そんな事はっ…「じゃあ、何で俺に郁が学校に来てるかどうか尋ねるんだよ?」
「!!」
「嫌いって振ったくせに、何で優しくするんだ?
そういう所、ハッキリ言って俺には意味が分からない。嫌いなら嫌いで縁なんて徹底的に切れよ。じゃないと弄ばれてる郁が可哀想だ」
―――確かに、浩平君の言う通りだ。
彼の言う事は間違っていない。
だけど、それは浩平君の“想像”が現実だった場合だ。
私は郁の事、嫌いなんかじゃない。嫌いになんてなれるわけがないんだ。
すぐに嫌いになれたなら、こんなに困って情けなく立ち止まる事はないんだ。