恋の施し


そんなある日のことだ。



「神崎、いる?」



ソイツは、俺とは別クラスにも関わらず、教室を覗き込み、何食わぬ顔で女に囲まれている俺を指名してきた。


そして俺と目が合うとちょっと失礼と言いながら俺を廊下の方へ引っ張って行く。


…一体何なんだ。




「相田楓だけど覚えてるかな?」




「……何の用だ?」




コイツと長く話す気はさらさらなかった。

元から俺にとってコイツは気に食わない奴だった。




「響花、辛そうなんだけど、どういうこと?」




「……知らねえ」




辛いのはこっちだっつーの。

しかもコイツまだ、響花の事を―――――…余計に気に食わねー…




「ふざけるなよ!あんたなら響花を幸せにできると思ったから、諦めたのに……そんなんじゃあ、諦められないだろ!?」



「諦めろよ」




響花は……お前になんか渡したくない。




誰にも渡したくない。
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