恋の施し
「郁、1つ言うけど、何があっても俺のこと殴らないでくれよ?」
「は?お前が俺の逆鱗に触れることでもするのか?」
雪音もよく分からねーと思ったが、今日は浩平まで意味分かんねー
ってか、顔見てるのにコイツが何を考えているのか全然分からん。
普段なら、結構自分で言うのも何だが人の感情を読み取るのは上手いんだ。
だが、その勘というか能力というか…が、全く機能しない。
あー…アレか。
響花不足だからかな…
やべぇ…俺、これってもう末期じゃね?
ハマりすぎだろ、しっかりしろ、俺。…うん、今更だ。
「……多分。でも、それは嘘だから、きちんと見届けてほしい」
「ますます意味分かんねー」
何だコイツ?
「これだけ言うために原田に代わって俺が郁の家に迎えに来たんだ」
「だから、どういう意味だ?」
ハッキリ言えよ。
「最悪、俺を殴ったとしても、絶対に目と耳は逸らすなよ。よく見て、聞くんだ」
「…分かったよ」
もう、どうでも良いや。
とりあえず、こう言えば良いんだろ、こう言えば。
それだけは分かる。
するとその俺の返事に満足したのか、浩平はニコリを笑ってうんと頷いた。
雪音といい浩平といい本当に何なんだ?